庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

フェルメールからのラブレター展(京都市美術館)

会期終了まで1ヶ月を切った段階でやっと足を運びました。もっとかかるかと思っていましたが、30分待ちで入れました。いずれにしても炎天下でなくてよかったです。早速フェルメールについてメモします。


展示されているフェルメール作品



「手紙を読む青い衣の女」

修復後世界初公開とのことですが、効果は圧倒的でした。画全体のイメージがかなり変わったのです(上の画像は修復後のものです。)。正面の人物の青が以前のシックなイメージとはまったく違う抜けた明るさになっています。女性の表情が微妙なので(それがこの画の面白いところ)以前は手紙の内容はよくない知らせなのかと思っていましたたが、この明るいブルーの影響で、これは今では「うれしい驚き」ではないかと勝手に想像するようになりました。椅子や背景の地図なども驚くほどクリアになっています。



「手紙を書く女と召使い」

アイルランドと東京でも観ましたが、その時と同じような完成度と落ち着きを感じた画です。なぜかこの画の実物を見ると冷たい凛とした空気を感じます。この作品でも召使いの表情が興味深いです。




「手紙を書く女」
12年前もこの美術館で観ました。服のふさふさな質感と真珠のような飾りの光の具合が好きですが、いつもそこにだけ目がいってしまいます。

参考:これまでに出会えたフェルメール作品リスト


他の画家の作品

他の画家の作品も興味深く、この時代のオランダの絵画が持つ日常生活の持つ地に足がついた感やパワーのようなものが感じられてよかったのですが、どうしてもフェルメールとの差を感じてしまいます。それは他の展覧会でも同様です。ピーテル・デ・ホーホなど、構図や題材がフェルメールにかなり似ていて(同時代の画家ですし)、それはそれで味わいのある画なんですが、やはり色の美しさ、光の柔らかさと明るさが段違いという気がします。そして極めつけが簡潔さでしょうか。比べてみるとフェルメールが全体的にはかなり描くものを絞り込んで深めていっているのがわかりました。

フェルメールとの比較とは別に、今回特にいいなと感じたのは、ヤン・リーフェンス「机に向かう簿記係」に描かれている光の映え具合とひげの質感、ヤン・ステーンの「老人が歌えば若者は笛を吹く」の猥雑さも感じる生活のエネルギーです。解説にあった、ヤン・ステーンの画に登場する家がいつも乱雑なことから、当時散らかった家のことを「ヤン・ステーンの家」と言っていたというエピソードがおもしろかったです。



ヤン・ステーン「老人が歌えば若者は笛を吹く」


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