[物語]
天才漫画家岸辺露伴は、デビュー前、下宿先で、若い女性から「この世で最も邪悪な絵」が江戸時代の日本で描かれ、今はルーヴル美術館に所蔵されていると聞く。その後女性は失踪した。10年後。プロの人気漫画家となり「人を本にして人生を読める」能力を持った露伴は、ルーヴル美術館へその絵を探しに行くが・・・
[感想]
ルーヴルの「バンドデシネプロジェクト」の一環として描かれた作品。そのため、荒木さん自身が語っているように、逆に日本を意識した画が頻繁に登場します。
もともと無国籍かつオリジナルな画が魅力の一つである荒木作品ですが、本作ではむしろ「和」をまとった画がまた非常に味わい深いものになっています。さらに、日本が舞台のパートはセピア、パリはピンク、ルーヴルの地下はペールブルーが下塗りされた上に、あのポージングから歪んだ構図、危険な香りさえ感じさせる配色が絡みあい最終的には美を構築しているという、素晴らしい「画集」のような趣です。
物語もいつもの荒木節つまり「奇妙な冒険」で、最初のページをめくったとき私は子どもをお風呂に入れようとしていたのに、気がつくと最後のページまで読み切ってしまったくらいの魔力があります。そんな、物語も画も一級の作品なのですが、私とってはこれは「画集」。大判フルカラーでよかった。登場人物のポージングにはルーヴル所蔵の名作(ミケランジェロなど)へのオマージュもいくつかあるようで、それを探す楽しみもあります。
こういうとんがり具合が、外見同様お歳を召されてもまったく衰えない荒木先生、引き続き切れ味鋭い作品をリリースし続けていただきたいです。