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外交路線における3つの選択肢とは - 孫崎享「日米同盟の正体−迷走する安全保障」

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)

職場の読書会で同僚がこの本について発表していたのを機に関心を持ったので読んでみました。

2005年10月29日、日本の外務大臣、防衛庁長官と米国の国務長官、国防長官は、「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書に署名しています。これは著者によると日米安保条約にとって代わったものだとのことです。では何が変わったのか。安全保障協力の対象が極東から世界に拡大されたという点です。

この変化の兆しは、1980年代に始まるシーレーン構想にもありました。それまで米国は日本の軍国化を抑えることを最重視してきましたが、これをきっかけに、「中東の石油に依存する日本は、海上補給路をソ連から守るため、対潜水艦哨戒機を大量に保有する」という流れ、つまり日本が哨戒機とはいえ積極的に兵力を保有することをアメリカ自らが薦める動きができたそうです。

では冷戦後はどうなったのでしょうか。米国には二つの道がありました。ひとつは重点を軍事から経済に移すこと、もうひとつは世界最強の軍を維持すること。当時日本の追い上げをうけていた米国経済から考えると、前者を選択することが自然でしたが、結局国防省などが中心となり前者が選択することになりました。そうなると、国民にその理由を説明することが必要です。そこでイラン・イラク・北朝鮮の脅威が「設定」されます。米国がイラク戦争にこだわった理由も(イスラエル・ロビーの影響力、という理由もありますが)そこにあります。ということは、このまま、先に述べた文書に署名した状態で日米同盟が進めば、日本はアメリカの世界規模の軍事展開に同調させられる可能性が高いといえます。

では日本はどうすればよいのでしょうか。本書が優れていると感じた理由は、この提言を、著者なりにしっかり行っているところです。分析・批評だけでなく、どうすればよいかを提示することは、本書のテーマ上、重要なポイントだと思います。

著者の提案はこうです。選択肢は3つある。第一は米国主導の戦略を常に受け入れること。第二は国連主導の方針を受け入れること、第三はNATOのように西側の価値観を有している国際機関との連携を強めること。

第一の道は、米国が先制攻撃・予防戦争まで実施しようとしている(その根拠も本書には示されています)以上、日本の危険負担は大きなものになり疑問がある。第二の道は有効ではあるが、中国とロシアが拒否権を有している以上、南オセチア問題のように、西側の理念を追求できない怖れがある。第三の道ではその怖れもない。したがって、NATOとの連携をもっと模索していいのではないか、というのが著者の主張です。NATOの域外国である日本がNATOと連携する難しさについては著者も述べていますが、それでも検討に値する内容だとのことです。


以上、本書の中心となる論を要約してご紹介しましたが、著者の言いたいことは、日米同盟は見直すべき時期に来ており、そのためには日本が国際情勢と戦略を学び、米国に追随しない場合もそれをきちんと米国に説明する力を持つべきだ、という点に集約されています。これは、現状を見ると大変に難しい提案ではありますが、個人的には、有権者としてこれらを学ぶ必要性は今やかなり大きくなっているのだなあという感覚を得ることができたのは収穫でした。


もうひとつ、ピンポイントではありますが、この本で得られた情報があります。日本が軍事的役割を果たす「普通の国」にならなけらば国際的評価は得られないという論がありますが、それは果たして妥当なのか、ということについてです。

2006年2月、BBCがWorld Public Opinionと共同で行った世論調査の結果があります。

世界主要34カ国が各国の影響力拡大をどう評価するか

国名 肯定する国 否定する国
日本 31 2
フランス 28 4
イギリス 26 5
インド 22 6
中国 20 10
ロシア 13 16
アメリカ 13 18
イラン 5 24

(日本に関して否定する2カ国は中国と韓国)

これを見る限りでは、日本はすでに世界からトップクラスの好感を得ているということ、そして米国がかなり嫌われていることがわかります。この調査一つをもってすべてを判断することは危険ですが、どうも日本は無理して軍隊を持って「国際貢献」しなくてもいいし、アメリカに追随すると嫌われるのではないか、という気はします。


いずれにしても、政治に関することは信頼できる情報をもっと集めて、自分の考えを持つことが重要なのだなと改めて考えさせられた参議院選挙投票日でした。


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