庭を歩いてメモをとる

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村上春樹ロングインタビュー(季刊「考える人」2010年夏号)

考える人 2010年 08月号 [雑誌]

2泊3日、80ページに及ぶ超ロングインタビュー。インタビュアーの松家編集長は、春樹さんの作品だけでなくその他の小説・音楽にも造詣が深く、ちゃんと互角のやりとりをしています。

だから非常に読み応えがあります。今までに知られていたことをさらに深く切り込んだ内容もあれば、「1Q84」は、ストーリーでも登場人物でもなく最初にタイトルが決まったことなど、今まで知られていなかったこともたくさん。「国境の南、太陽の西」は、最初「ねじまき鳥クロニクル」の一部だったというエピソードは既出でしたっけ?私は知らなかったので驚愕しましたが。

作品だけではなく、春樹さんの生活や趣味にも話が及んでいるので、ファンの方にはよりうれしい内容になっていると思います。「昼寝の音楽」「料理のこと」「音楽のこと」「着るものについて」など、コラム風にまとめられています。

意外でもあり、また納得もしたのは、春樹さんのアメリカでの売れ行きへの関心です。批評も読まず、本の売れ行きにも大きな関心を寄せているように(少なくとも私には)感じられなかった春樹さんですが、アメリカ進出後、「海辺のカフカ」が全米ベストセラーリストでハードカバー17位だったとか、「走ることについて語るときに僕が語ること」が14位だったとか、子細に語っています。そこからは、ある時期以降、アメリカで売れることを目指し、そのための努力を惜しまなかった春樹さんの姿勢が見えてきます。


発売中の雑誌なのでこれ以上のネタバレは控えますが、村上春樹の作品(特に「1Q84」)、そして人物に関心のある人には得るものが非常に多いと思います。あ、ただ、冒頭にも書かれていますが、「1Q84」を未読の方は読まないほうがいいと思います。作品の内容にかなり踏み込んだ発言が多数ありますから。

個人的には、春樹さんが気に入っていた本の情報が多く入ったこともありがたかったです。ウィリアム・シャイラー「第三帝国の興亡」、安岡章太郎、リチャード・ブローディガン「アメリカの鱒釣り」・・・また読みたい本リストが増えて嬉しい悲鳴です。


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