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村上春樹「1Q84」BOOK3

1Q84 BOOK 3

BOOK1&2はほぼ15時間連続で脇目もふらずその世界に没入し、時に戦慄を覚え、時に快感を得ながら読み切りました。BOOK3は2週間かけて断片的に、春樹さんの「親切心」を随所で感じつつ味わいました。

私にとっては、それほどまでにこの二つは異なるものでした。同じ一連の物語なのに。

一番の驚きは、いまだかつて春樹さんが読者に対しこんなに「親切」だったことがあっただろうかというものでした。読者が「こうならいいな」という方向に物語が進む。シンプルでわかりやすいプロット。BOOK1&2から1年近くたっておぼろげになっている以前のストーリーを解説してくれるような仕組み。わずかになった「解釈ぶん投げ」の姿勢。春樹さんは「翻訳とは親切心です」というようなことを書いていたことがありますが、翻訳で培ったその「親切心」を今作でいかんなく発揮されたのでしょうか。

次回作は、また「解釈ぶん投げ」の方向に、しかもかなり大幅に、振れていくんじゃないかな。今頭の中にあるのはそのことです。あるいは、BOOK1&2で(古くは「ねじまき鳥」でも)提起されながらも回収されていない「暴力」について、落とし前をつけてくれるのでしょうか。いやたぶん、また想像もつかない物語を、流れるように自然で芯の通った文章で描いてくれるのでしょうね。


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