庭を歩いてメモをとる

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キアラン・カーソン「シャムロック・ティー」

シャムロック・ティー (海外文学セレクション)

[物語]
1959年、北アイルランド・ベルファスト。カーソン少年は、いとこのベレニスとヤン・ファン・エイクの「アルノルフィーニの結婚」という絵に入り込んでしまったことがあった。その後、少年は寄宿舎学校に進み、メーテルリンクという名の少年と仲良くなる。彼ら3人は、自分たちが特別な能力を持っていることに気づき始める・・・

[感想]
改めて思い起こすと軸になる物語は単純なのですが、この本を読んでいる間は単純などとは決して思えませんでした。その理由は、あまりに多彩な枝葉のエピソードや歴史的事実の連続、時間と場所を軽々と飛び越える展開にあります。

とにかくいろんなものが出てくる。北アイルランドとは一見関連のなさそうなヤン・ファン・エイク、コナン・ドイル、オスカー・ワイルド、ウィトゲンシュタインなどの人物が次々と、ちゃんとした関連性をもって登場し、それぞれの言葉を述べていきます。そのひとつひとつが興味深い。そして、意外なエピソードが多いので、本当かなと思って調べてみると、場面設定などはけっこう史実に忠実だったりします。こういうところもおもしろい。

そしてどんだけ出てくんねんと半ばあきれるほどのカトリック聖人列伝と聖人祝日のオンパレード。「ボーンが自分の無神論を公言した10月28日は、絶望的な状況にあるひとを守護してくれる聖ユダの祝日です。また、彼がキリスト教への改宗を公表した11月11日は、大酒飲みと仕立屋の守護聖人トゥールの聖マルティヌスの祝日。耳と口と目の働きが回復したと宣言した11月15日は、オーストリアの大公で同国の守護聖人、聖レオポルドの祝日です。・・・」こんな感じです。アイルランドの小学校に通っていた妻に訊いてみると、確かに毎日が誰かの聖人の祝日で、そのことを先生が話していたとのこと(アイルランドは公立学校でもカトリックを教えます)。そう、やっぱりこの本は、タイトルだけでなく、中身も芯までアイルランドが染みこんでいます。そんなわけで、アイルランド好きの方はよりいっそう楽しめる物語かもしれません。

こんな小説の書き方もあるんだなあと思わされた作品でした。



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