庭を歩いてメモをとる

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ピエトラ・リボリ「あなたのTシャツはどこから来たのか?」

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

アメリカ人の学者が、自分がフロリダで買ったTシャツがどういう「一生」をたどるのかを追いかけた本。

アメリカで栽培された綿が中国に渡ってTシャツになり、またアメリカに返ってきて買われ、古着になり慈善団体などを経てアフリカで「一生」を終える。その経路を、現地に足を運び、詳細に、かつ歴史的背景もふまえながら書いています。

個人的にこの本で一番興味をもったのは、なぜ綿が、人件費の高いアメリカで栽培されているのかという点でした。そういう原材料は、人件費の安い国で作ったほうが安上がりになるはずだから、アメリカの綿農家はそれに太刀打ちできないのでは。そう考えたのです。ひょっとして、アメリカの農業は機械化が進んでいるから安上がりになってるのかなとも思いましたが、それは主要な理由ではありませんでした。最大の理由は、アメリカ政府による保護でした。

もともとアメリカの綿農業は南部の奴隷制によって成り立ち、世界でのシェアを伸ばしていったのですが、奴隷制が終わった後も、政府は公共政策で綿農家を保護したのです。現在も、生産高ごとで見た場合、綿の生産者が受け取る補助金の額はトウモロコシや大豆の3倍から6倍だそうです。その総額は2000年で約40億ドルにのぼり、世界最貧の綿生産国数カ国のGNPを上回るばかりか、アメリカ国際開発庁のアフリカ関連予算よりも多いそうです。

アメリカは自由競争によるグローバリズムの権化というイメージを勝手に持っていたのですが、特定産業の保護はしっかりやっているのですね。綿の生産者がなぜそんなに政府に対して力を持っているのかという一番知りたい部分はこの本にははっきり書かれていませんでしたが、いずれにしてもこの本のおかげでアメリカへの新たな視点を持つことができました。


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