庭を歩いてメモをとる

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「デスノート」は英語版でどう翻訳されているか

先日、フランスに旅行に行った友人が「デスノートが平積みで売られてた」と教えてくれました。そういえばロンドン在住の友人もイギリスでもデスノートが読まれているって言ってたし、ふと海外のデスノートってどんな訳され方をしてるんだろうと気になって、アマゾンで英語版を買ってみました。

以下、日本語版を読んで「ここはどう訳してるんだろうなあ」ってところをチェックしてみた結果です(若干のネタバレを含みますが、ストーリーが明確にわかってしまうことはないと思います。)。

訳され方の例

1.シブタク

「俺 渋井丸拓男 略してシブタク」

これって、「シブタク」が「キムタク」にひっかけてあることや「キムタク」がなんであるかがわからないと意味不明な台詞になってしまいますが、英語版では、

My name's Takuo Shibuimaru, that's SHIBUTAKU* for short

※"Shibui" means "cool" so he is "Cool Taku" It is also similar to Japanese Idol Takuya Kimura's nickname "Kimutaku"

と、ちゃんと注釈を入れています。

2.渋井丸拓男

渋井丸拓男 事故死
渋伊丸拓男 事故死
渋井丸拓夫 事故死
渋伊丸拓夫 事故死
渋井丸拓雄 事故死
渋伊丸拓雄 事故死
渋伊丸卓男 事故死

デスノートには殺したい人物の名前を正確に書く必要があります。それでデスノートの使い手は耳だけで聞いた「しぶいまるたくお」の正確な漢字を想像してどんどん書き込むわけですが、これ、英語版ではどうなっているのか?

TAKUO SHIBUIMARU TRAFFIC ACCIDENT
TAKUOH SHIBUIMARU TRAFFIC ACCIDENT
TAKUO SIBUIMARU TRAFFIC ACCIDENT
TAKUOH SIBUIMARU TRAFFIC ACCIDENT
TAKUO SHIBUYIMARU TRAFFIC ACCIDENT
TAKUOH SHIBUYIMARU TRAFFIC ACCIDENT

漢字の当て方を綴りの当て方に見立てているのですね。それにしても「い」を"YI"に当てるんだ。

3.えるしつているか

デスノートで殺された囚人の残したメッセージ。このメッセージの行頭の1文字だけを読むと別のメッセージを読みとることができるのですが、これは英語版ではどうなっているのでしょうか。

かんがえ
ると
いずれしけいになるか
てまねきしているあい
つにころされるだけだ。
しってい
る。おれは、キラのそんざいを。
えものにされる。

(行頭の1文字を下から上に読むと「L知っているか」になります。)

Lord have mercy,
Do what I can, I'll either be hanged or
you know it, killed by Kira, I
know about him He's going to get me.

行頭の最初の単語を上から下に読むと"L(Lord) do you know"になりますね。
これはそのまま訳すことが不可能な部分。翻訳者は努力してるなあって感じです。

4.見開き方向

英語版を読んでいてふと気づいたのですが、日本版同様右ページから左ページに読み進む構成になっています。これって英語の本とは逆のはず。あれ?と思って裏表紙をめくると、そこには大きく"You're Reading in the Wrong Direction!!"の文字が。

その下に、なぜこうなっているかの説明がありました。日本のまんがは英語とは逆に右から左に読み、吹き出しを読む順もそうなっていること。だから日本のまんがを英語に翻訳するときには、絵を裏焼きにして左から右に読み進めるようにすることもあること。しかしながらそうするとTシャツに書かれた"MAY"という文字が"YAM"になってしまったりするので、「デスノート」ではあえて裏焼きは行わない、など。

ちなみに、よく見ると本編の隅にも"READ THIS WAY<<"って注記があちこちになされています。右から左に読むのって英語圏の人には大変なことなんですね。

5.その他

・死神は最初から"SHINIGAMI"となっています。西洋の死神とデスノートの死神って別物なんでしょうか。

・「そして僕は・・・新世界の神になる」が"And I... will reign over a new world"になっています。「神になる」っていうのは西洋ではまずいんでしょうか。

・もともと縦書きの台詞が入っていた縦長の吹き出しに横書きの英語を詰め込んでいるので、改行が異様に多い文章になっています。

・台詞が全部大文字。でもすぐに慣れました。


全体的に、丁寧に翻訳されている感じです。ちょっとした台詞も全部訳してるし。これなら「デスノート」の本来の品質が損なわれずに英語圏に紹介されていると思ってよさそうです。


そもそもノートをNoteと訳していいのか

ところで、そもそもの疑問もあります。

タイトルを"Death Note"とそのまま訳していますが、ノートの英訳はnotebookでは?

これについての回答がサイト「ネイティブと英語について話したこと」さんにありました。

こちらによると、たしかに死神所有の黒い帳面を指すならば「Death Notebook」が正しい表現かもしれないが、人の死について書いた文章そのものを指して「Death Note」と呼ぶことは可能、なのだそうです。ネイティブに聞いてもそこまで気にならない、との回答だったそう。

note / notedの意味と使い方、noticeとの違い | ネイティブと英語について話したこと

なるほど、文章そのものがnoteなのか。たしかに、タイトルの意味は変わりますがまったく違和感のない「英訳」ですね。

だから英語版も"Death Note"。合点がいきました。


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