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朝日新聞特別報道チーム「偽装請負−格差社会の労働現場」

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)

AさんはB社で働いているけど、B社の社員ではありません。その場合、労働形態として考えられるのは二通りあります。ひとつは、Aさんが人材派遣会社C社の派遣社員であるケース。この場合、AさんはB社社員の指揮命令の元で働きます。しかしB社の職場が製造現場の場合、3年以上の派遣はできません。もう一つのケースは、Aさんが請負会社D社の社員である場合。この場合はAさんはB社ではなくD社の指揮命令を受け、D社はAさんたち自社の社員の労働の成果を会社としてB社に納品します。この場合は、B社の現場が製造現場であったとしてもD社は期間の定めなくB社でAさんに働いてもらうことができます。

偽装請負は、このふたつを違法にミックスさせたものです。Aさんが請負としてB社で働いているのに、B社社員の指揮命令の元で働いているケース。表面上は請負なので、派遣と違って期間の定めなく働いてもらうことができます。B社は、自社の正社員を雇用することなく、安い人件費であたかも自社の正社員のような人員を確保することができるというわけです。

この本は、この偽装請負がキヤノンや松下電器産業など、高収益を出し続けている企業グループで常態化していた事実を報道しています。主にフォーカスされているのは、結果的に「正社員と同じ現場で同じ仕事をしているのに給料が上がらず職も安定していない」請負会社社員の悲哀です。

その条件が不満なら請負会社社員にならなければいいのに、という意見もあるでしょうが、製造業で働きたいが選択肢がほとんど請負会社しかない、という状態ならそれは酷ではないかと思います。実際はどうなのか。そのあたりをこの本ではもっと突っ込んでほしかった気はします。いずれにしても、偽装請負は、企業にとって人件費という大きな出費を抑える方法として非常にメリットが大きく、一方で労働者側には不利な面が大きい(安定性や給与などの他に、労災などもより隠される傾向にある)仕組みということはよくわかりました。

個人的に印象に残ったのは、請負会社最大手のクリスタル(現在はグッドウィル・プレミア)社の創業、成長から摘発、グッドウィル・グループへの「身売り」までのあゆみが書かれた部分。かなり大きな会社(売上高でいえばカシオ、丸井と同規模)であるにもかかわらずあまり表にでてこなかった企業について知ることができたのは興味深かったです。実は私の勤務先も、製造現場ではないものの請負を生業としている事業部門。クリスタルの営業姿勢などには、賛成できかねる部分も多いものの、さすが最大手は厳しさが違う、と素直に感じました。



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