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嘉門達夫の替え歌は人格権に触れないのか?-岡本薫「著作権の考え方」(2)−著作者の人格権

(1)著作権

┣著作権(著作者の権利)
┃┣(2)人格権(無断で改変、公表、名前表示を変更されない権利)
┃┗(3)著作権(財産権)(無断でコピー、公衆伝達されない権利)

┗著作隣接権(伝達者の権利)
 ┣(4)人格権 → 実演者のみ
 ┗(5)財産権 → 放送局、レコード会社、実演者等

前回は、(1)著作権という大枠についてまとめたので、今回は(2)〜(3)についてまとめていきます。

まず、著作権(著作者の権利)、つまり小説でいえば著者、音楽でいえば作曲者、作詞者の権利から。


(2)人格権

・著作者の「心」を守る権利。
・「出版社が小説を出版するときに、無断で悲劇的な結末を喜劇的なものに変えてしまう」「演劇が予定日よりも先に上演されてしまう」「ペンネームで出版されるはずだったのに本名が出た」などの行為をなされないための権利。

これを読んでふと思い出したのが、嘉門達夫です。彼の替え歌は、どんなふうにして世に出て販売されているのでしょうか。通常なら、彼の替え歌は、この「人格権」に触れるはずです。

この疑問への回答が、安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス」(読んだのは第一版。現在は第四版が出ています)に明解に記されていました。

彼は、91年に発表された「替え歌メドレー」で26の元曲を替え歌にしています。このうち1曲(そうらん節)は著作権が消滅しているのでいいのですが、それ以外はすべて作家(作詞家?作曲者?両方?)に許可を得ているとのこと。通常は嘉門達夫の事務所が作家に連絡をとっているものの、中には嘉門氏本人が直接依頼をしたケースもあったとか。それでも、だいたい15%くらいの人には断られたということです。

The Very Best Of KAEUTA MEDLEY

ちなみに、例えば「海パンの中井貴一が腰を振る物語」(「チャコの海岸物語」ですね)というような歌詞の場合は、中井貴一の許可ももらわないといけないのですが、これは著作権の問題ではなく民法の名誉毀損の問題になります。


CMに曲を使う場合は?

これはこの(3)人格権の問題になります。自分の曲に特定の商品のイメージがつくことについて、かまわないと思う「心」もあれば嫌だと思う「心」もあるだろうから、事前にしっかり許可を得ておく必要がある、ということですね。

ところで、この(2)人格権は後に述べる(3)著作権とは違って永久に消滅しないし、譲渡や相続もできない、著作者本人に帰属する権利、とのことです。しかしそうなると、例えばマルセル・デュシャンの「L.H.O.O.Q.」はどうなんだろう?(3)人格権は消滅はしていないものの訴える人がいないってことなのかな。

次回は、(3)著作権(財産権)についてまとめます。



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