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シッピング・ニュース

シッピング・ニュース 特別版 [DVD]

[物語]
新聞社でインク係をしていたクオイルは、子どものころの経験がもとで水が怖く、何に対しても自信が持てない中年男。行きずりの女性と子どもをつくるが、その女性にも見向きもされない。そんな中、女性が事故死。深い心の傷を負ったクオイルは、祖先の住んでいたニューファンドランド島に向かう・・・

[感想]
「心温まる感動作」とか「美しく厳しい自然」というキーワードで紹介されることのよくある作品ですが、個人的にはどちらもこの作品にふさわしいとは感じませんでした。代わりに、「『家』のもつ呪縛とそこからの解放」「陰鬱で厳しい自然」を感じました。

まず、「『家』のもつ呪縛とそこからの解放」。クオイルは、子どものころ父にうけたせっかん?の影響からなかなか逃れ得ないだけでなく、一族の忌まわしい数々の過去を次第に知るようになっていきます。それを知っていく過程は、心温まるどころかおぞましく恐ろしいものです。ただ、そこはラッセ・ハルストレム監督、「ショコラ」や「サイダーハウス・ルール」で見せてくれた「現実から遊離しないおとぎ話感覚」はここでも健在で、ただ怖いだけの突き放した描き方をしていないところが救いですが。

そして「陰鬱で厳しい自然」。晴れた空がほとんど見えず、海は人の命を奪っていく。そんな島に、残念ながら美しさは感じませんでした。それに、嵐などの自然の描写はあっても、それ以外は(田舎なのに)人造物の描写が多いし。ほとんどモノトーンのように感じられる映像の連続に、住民の方々には失礼ながら、ここには住みたくないなと感じてしまいました。

しかし、そんな映画でありながら、観終った後は独特のすがすがしさと未来への希望が訪れました。独特のこの感覚は、少し「サイダーハウス・ルール」に近いものがあります。同じストーリーでも、監督によって印象がまったく異なるであろうこの物語をこのような感覚で料理してくれたのは、やはりハルストレム監督の力量といっていいのかもしれません。


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