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橋爪大三郎「はじめての構造主義」

はじめての構造主義 (講談社現代新書)

harvest blogさんから教えていただいたこの本。哲学の本ということで、「はじめて」なんていいながら実際はやっぱり難しいんじゃないかな、と少し身構えて読み始めましたが、結果的には実にスムーズに読み進められました。著者の橋爪さんは、おもねったり変なうけを狙ったりせず、かといってもちろん手を抜いているわけでもない。ただわかりやすく書いていました。まずそこに驚きました。

内容に関しても、タイトルからは想像できない広がりがありました。もちろん、構造主義についての話なのですが、いわゆる「哲学」のイメージからは想像できなかった様々な分野が相互に関係しながら展開していく。単なるひとつの思想だけを扱った入門書に留まっていなったのです。

例えば、哲学とその他の学問の関係。個人的には、哲学ってまあそれなりにおもしろいかもしれないけど現実とは相容れない別世界の話だと思っていたのですが、少なくともこの構造主義ではそうではなく、数学、文化人類学言語学など他の様々な学問とのつながりがあるということがわかりました。

そもそも、この構造主義を唱えたレヴィ・ストロースは、文化人類学の仕事からこの構造主義を見いだしているのです。ブラジルの原住民と暮らし、そこでわかった近親結婚タブー規則を論文に書くのですが、それには数学の補足がついています。それに、そのタブー規則を考えるにあたっては、ソシュール言語学(の、考え方の部分)も取り入れている。そんな「文化人類学featuring数学・言語学」みたいな論文なのに、構造主義という思想が世に広まるきっかけになる・・・これだけ書くと???って感じでしょうが、この本を読めばその関連がよくわかると思います。

で、何がいいたかったかというと、ひとつにはこの「いろんな分野のつながり」具合。様々な、一見関係のなさそうな理屈が一緒になって新しい考え方を提示する。この成り立ちになんだか興奮させられたのです。もうひとつは、哲学が決して現実から遊離したものではないということを認識できた点。いや、これらのことって、わかっている人には当たり前のことなんでしょうけど、私はこの本によってやっとそのことがわかったという次第です。

といいながらも、「構造主義って何?あなたはそれについてどう思うの?」と訊かれてもまだ説明ははっきりできない自分もここにいます。何回もこの本を読んで、自分の考えを整理していくつもりです。

いずれにしても、今まで自分の知らなかった新しい扉がひとつ開いたような感触がたしかにありました。


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