庭を歩いてメモをとる

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片岡義男「道順は彼女に訊く」

道順は彼女に訊く (角川文庫)

外出先で手持ちの本を読み終えてしまいました。この時思い出したのが去年の11月5日のメモ。yajitomokoさんから、片岡義男の小説を紹介してもらったのです。村上春樹作品のそこかしこに描かれる「丁寧な習慣と静かな信念」が片岡作品にも満ちている、とのこと。それで、その時目の前にあった本屋で一冊だけあった片岡義男の本を買ってみたのです。

読み終えての感触は、yajiさんのおっしゃるとおりでした。主人公はおそらく品のよいシンプルな家具や持ち物に囲まれ、上品で丁寧に話す。エスプレッソを飲むシーンがたくさんありますが、コーヒー嫌いの私でも豆を挽きたくなるような描写です。

それだけではなく、女性が突然失踪するというストーリー、登場する不思議な魅力のある女性たち、独特の静けさ。これらも村上春樹作品との共通性が感じられます。そういえば著者が英語に長けている点も似ていると言えば似ていますね。

しかし、作品そのものの印象はなぜかまったく違います。どちらも「おもしろい」小説であることには変わりがありませんが、読後感は全く違う。なぜなのかはわかりませんが。共通点もそれなりにあるけど、相違点はもっと多いってことなのでしょう。

村上春樹は、読んだ後、ずしりとした怖さのようなものが残ります。片岡義男は、読んでいる最中に感じていた感覚は読み終わった後きれいに洗い流されます。どちらがよい悪いではなく、そういう違いを感じる次第です。

次は、yajiさんがお好きな「ハートブレイクなんてへっちゃら」「朝になったらタッチミー」「彼を愛して何を得たか」「彼女のリアリズムが輝く」「最愛のダークブルー」のどれかを読んでみようと思います。ご紹介ありがとうございました>yajiさん


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