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酒井邦嘉「言語の脳科学」

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)

英語を勉強していて、言語と脳の関係についてちょっと知りたいなと思って手に取ってみた本です。

結果的には、中で紹介されている内容はあまり理解できなかったのですが(著者のまとめ方が悪いわけではなく、多分私の興味や理解力以上にいろいろな要素が詰め込まれていたためだと思います)、紹介されている様々な事例が興味深かったのでピックアップしてみます。なお、引用枠内の文章はよしてるが意味を損なわない程度に要約・編集してます。

幼児は、与えられる言語データが不完全でも、完全な文法能力を生み出せる。これはなぜか?言語は、本人の努力による学習の結果生じるのではなく、脳に「言語器官」があり、言語知識の原型がすでに脳に存在していて、その変化によって言語の獲得が生じるからである。つまり、自然言語には文を作るための必然的な文法規則があり、それは普遍的かつ生得的な原理なのである。ただし、意味や概念の学習は、当然後天的。

この生成文法理論については、ほんまかいな?とびっくりしました。たしかに理屈上は納得できるけど、脳科学(生物学)的にもっとしっかりした「証拠」が欲しい気がします。

この本にも、脳のどの部位が言語に影響があるかどうかは書いていたけど、「ここが文法脳」みたいな明確な記述はなかったように思います。でも、この本を責めているわけではありません。この本にもありましたが、脳の研究は「ちょっと実験」ってわけにはいかないし、なにより複雑な器官ですから。まさにこれからの分野ってことですよね。この本でも、そのために「言語学=文系・脳科学=理系、というような枠をとっぱらうべき」という至極まっとうな意見が頻出しています。

上記の考えを述べたノーム・チョムスキーは、古今東西の人文科学で引用されるトップ・テンの第8位で、唯一健在。ちなみに上位10名は、マルクス、レーニン、シェークスピア、聖書、アリストテレス、プラトン、フロイト、チョムスキー、ヘーゲル、キケロ(シカゴ・トリビューンによる)

(言語とは関係ありませんが)アリストテレスやプラトン、キケロっていまだにこんなに引用されてるとは知りませんでした。人文科学ではギリシア・ローマの影響力って今も大きいんですね。

生後6ヶ月で脳損傷と診断されたある人は、29歳のときの精神年齢は9歳くらいだったが、20カ国語を使いこなした。言語の習得が異様に早く、彼が既に知っている言語とは起源も類型も異なるベルベル語を学ばせたところ、「女性主語に対立する男性主語を伴う動詞形」をたった二例から推測。しかし、自然言語でない言語は習得するのが難しかった。

生成文法理論のひとつの証拠にはなるのかな。

読字障害とは、文字を視覚的には正しくとらえられるのに、文字で書かれた文章を正確に読めないという障害。日本ではあまり知られていないが、欧米では全人口の5%〜10%もいる。ちなみに、この障害を持つ人は、日本やイタリアよりも、アメリカやイギリスで多い。これは、英語の場合、文字と発音の対比が日本語やイタリア語より難しいためではないかと言われている。

これって、宮部みゆき「模倣犯」に出てきたような気が。それと、日本語も漢字と読みの関係は英語より複雑では、と思いましたが、英語では40の音素を表わすのに1200通りもの文字の組み合わせがあるそうです。

フランス語を母語とする両親から生まれた乳児は、生後4日でフランス語とロシア語を聞き分ける能力を既に持っている。これは、母親の言語を胎児の段階で聞いていることを示している。

1970年代のアメリカでは、幼児虐待により声を出すことが許されず、13歳で保護されたときには全く話すことができなかった少女がいるが、その後8年たっても発話も理解も正常に戻らなかった。

言語習得にあたっての幼児期の重要性はこの本でもたくさんの例が出ていましたが、特に衝撃的だった2例を挙げてみました。


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