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村上春樹「東京奇譚集」

東京奇譚集 (新潮文庫)

村上春樹の作品を手にとるときに私がまず期待するのは、そこに描かれる人々の丁寧な習慣、あるいは静かな信念です。例えばこの短編集では、「偶然の旅人」に出てくるこんな箇所。

火曜日に彼は、その人気のないカフェで、十時過ぎから一時まで読書に耽った。一時になると近くのレストランでツナ・サラダを食べ、ペリエを一本飲み、そのあとジムに行ってたっぷり汗を流した。それが彼の火曜日の過ごし方だった。

こういう描写は、なぜか私に安らぎとささやかな力を与えてくれます。時には作品そのものより印象に残ることもある。この短編集にも、いくつかこんな丁寧な習慣や静かな信念が現れました。おかげで今日の午後は落ち着いた気持ちになれ、うれしい。

収録作品そのものの感想としては、相変わらずの読みやすさと静けさ、そして若干の奇妙さを堪能できこちらも期待通り。特に印象に残ったのは、カフェで出会った女性と、10年間距離を置いていた姉との不思議なシンクロニシティを描いた「偶然の旅人」と、息子を亡くした現場で過ごすも感傷に埋没しない母を描いた「ハナレイ・ベイ」かな。あと、「日々移動する腎臓のかたちをした石」には、生き方について考えさせられる言葉がありました。

他にまだ読んでない村上春樹の短編がいくつかあります。読んでみたいと思いつつ、少し疲れている時期にとっておくのもいいか、とも思っています。こういう作品・作家をもう少しラインアップしておきたいな。


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