庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

小熊英二「<民主>と<愛国>」プロローグ

〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性

この本を購入したのは一昨年、それ以来ほとんど読まずにいました。小熊ファンを自認しながらもそんな長い間ほったらかしにしていたわけですが、今回の出張の移動中、やっと読み始めることができたので、少しずつ気づいたことについてメモをとっていきたいと思います(電車の中に往復7時間もいなければならないということで、小型スーツケースにこの本を詰め込んで出かけたのです。スーツケースなら車輪つきなので約1,000ページのこの本でも重くないし)。

終戦直後以降の日本の思想・言論を膨大な資料(注だけで120ページ)を元にまとめ、戦後のナショナリズムと「公」にかかわる言説の変容を明らかにしているらしいこの本。まず最初の数章を読んで感じたのは、人間にとってどれだけ「プライドを支える思想」が重要なのか、ということです。

戦時下で「自分より教養の低い」兵士に虐げられた学徒兵の心情、戦後「四等国」と言われていたころの日本で、新憲法の第9条にすがるように誇りを感じる人々、そして実はその誇りであるはず憲法がアメリカの手によって作成されたという事実に対し、どう「日本の誇り」と位置づけるかの様々な解釈、そして何より、招集の恐怖があった世代となかった世代がそれぞれの「プライド」を支えるためにどのような思想を構築していったのか・・・とりあえず第5章まで読んだ時点で一番印象的だったのが、以上のような「プライドを支えるためのすさまじいエネルギー」でした(書かれている内容の本論とはずれるのですが)。

もうひとつの感想は、「相変わらずこれだけの量の文章でも読みやすいし興味が持続するように書いてるな、小熊さん」といういつものものです。おもしろいって大事なこと。

(この続きはさらに2年後、2007年5月8日のメモになります。)


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