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エラリー・クイーン「Xの悲劇」- Xの悲劇的な過去

エラリー・クイーン「Xの悲劇」を25年ぶりに読み返しました。

Xの悲劇 (創元推理文庫)

いやあ、読み返してよかった。子どものころ読んだ印象とは大違いで、「事実からの冷静な推理が意外な真実をあばく」という、推理小説の基本中の基本みたいなものがお手本のように描かれてるなと思いました。個人的には、タイトルが最後の最後で活きてくるのにもしびれました。

まあ、子どものころの私には、随所で登場するシェイクスピアのセリフや、老優ドルリイ・レーンの執事や住まい「ハムレット荘」の描写などは退屈でしょうがなかったのでしょう。それに、全体的にゆっくりとした展開なのでそこもつらかったのではないかと思います。でもこれも、大人になってから読み返すと、味のある舞台装置として楽しむことができました。年をとっていいことのひとつですね、こういうことは。

しかし、「ああ、またか」と、私が海外の古典的な推理小説(というか、ホームズシリーズ)にありがちだなと思っているネタがこの作品にもあったのは事実。「Xの悲劇」の完成度を損なうものでは決してないのですが、この点だけが気にかかりました。

(以下、ネタバレです。未読の方はご注意ください。「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」のネタバレも含みます。)













なんか、古典的な推理小説には、被害者が殺される理由として「植民地や開発途上地域で大もうけしたが、その時に若気の至りで犯罪を起こしていて恨まれている」というのがけっこう目につくように思うんですよね。少なくとも、ホームズものはそういうネタの宝庫ですよね。だからといって「Xの悲劇」同様、ホームズものの面白さがそれで損なわれるってわけでもないのですが、ちょっと多すぎるような気もしています。

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「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」は、私程度の「ホームズがけっこう好き」「とりあえずホームズは全部読んでいるがそれ以上の『研究』はしていない」くらいのファンには、オリジナル・ホームズの様々なネタが散りばめられていて楽しい作品だと思っています。

この作品にも、上で書いたような犯行動機が登場するんですよね。ただ、この場合は、「あ、またか」ではなく、「あ、これもオリジナルホームズのパロディかな、だとしたらおもしろい」と受け取ったのですが。


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